はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第21章 『白鳥美幸のその後』
『すいません、遅くなりまして。
お待たせしました…美幸さん』
「ううん、大丈夫よ。仁君。
全然、私は、待ってないわ。
私が…仁君に会うのが楽しみ過ぎて
時間よりも、早く来すぎてしまっただけよ?」
…と言う美幸の言葉にある通りに、
僕が待ち合わせに遅れたのではなく
まだ10分以上指定された時間まで
時間がある…感じだった。
美幸が座って居るテーブルの向かいに
仁に座るように促して来て。
仁が美幸の向かい側の椅子に腰を降ろした。
水とおしぼりを持って来た店員に
ホットコーヒーを注文する。
『珍しいですね…、喫茶店で
わざわざ待ち合わせするなんて』
「この喫茶店はね…、昔…20代の頃…に
まだ…主人とお付き合いをしていた頃にね。
もっと家の近くにも…、喫茶店は
幾つも…あるには、あるんだけど。
ご近所の喫茶店だったら、
知っている近所の人に見られるかもだからって。
わざと少し遠い…この喫茶店で…ね、
主人と会う時は…いつも、ここの
この席で待ち合わせをしていたの…」
美幸さん…は…ご主人の白鳥慎二さんが
亡くなってからも…ご主人一筋で、
再婚とか…新しい恋人をと
考えないで…生きて来ていた女性だから。