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マスカレイドナイト

第5章 アフターナイト


ナオトが自分が手に持っていた、
ギムレットが入ったグラスを
唯花の方に向けて来て。

求められるままに、チンと…
お互いのグラスを合わせて乾杯をした。

その鮮やかな色をした
紫色のカクテルは、
一口…口に含むと…ふわりと…
自分の口の中で華やかな…
スミレとバラの香りが広がる。

そのフローラルな花の香りの中に
バニラの甘い香りと、
レモンの爽やかさが混じる。

『今夜は…、
月が近かった…のですかね?』

そうナオトに対して、
バーテンダーが声を掛けて来て。

『かぐや姫は…
月に帰ったのだとばかり、
月を見上げて思いながら。
僕はグラスを傾けて居ましたよ』

ナオトの言って居る事が分からないと、
唯花がバーカウンターの中の
バーテンダーに助けを求めると。

バーテンダーが彼が飲んでいた
ギムレットのカクテル言葉と、
そして…今…私が飲んでいる。
この紫色をしたカクテルが、
”ブルーム―ン”と
呼ばれているのだと説明をして来て。

”遠い人を想う” ”長い別れ”の意味を持つ
ギムレットを飲みながら。
月に帰ってしまった貴女を想い偲んで
あの一夜を思い出していたのだと。
そう耳元で囁かれてしまって。

このブルーム―ンのカクテルは
かなり…アルコール度数が
高いカクテルの様だけど。

それ以上に…
クラクラと眩暈を憶えてしまうのは。

あの…、

マスカレイドナイトの…一夜の。

あの夢の記憶が…、

脳内に鮮やかに蘇って来るから。


『その…貴女の手にある…ブルーム―ンの
カクテル言葉はご存じでしょうか?』

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