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ビッケ

第1章 ビッケ…

 ③

 わたしはそんな和哉くんという名前と、映画をよく見るという事で、僅かにあった心の中の警戒心が緩んだ…

 そして爽やかなスパーリングワインの酔いのせいもあった…

 そして…

 この和哉くんは…

 まあまあかわいいのだ。

 更にもうひとつ…

 これも某作家さんとのメールでの会話で判明したのだが…

 わたしは年下のかわいい男が好きらしい。

 最近のわたしの作品にもその傾向が顕著に現れているのだ…

 だから…

 少しだけ、うんそう、少しだけ…

 ときめきも感じていた。

 だが本当は、少しだけ…
 と、必死に思い込ませていたのだ。

「ふーん、じゃ、和哉くんはどんな映画が好きなの?」

「はい、僕は………」
 そしてまずは映画の話しで打ち解けて、盛り上がる。

「へぇ、わたしと意外に趣味合ってるわぁ、だから、よく映画館でカブるんだね」
 だんだんと心もリラックスしてきていた。

 清潔感のある軽い感じのツーブロックのヘアスタイル…

 まだ草バスケをしているという体型…

 顔もスッキリしょうゆ顔…

 そしてなぜか心に引っかかる目…

 本当にかわいい顔をしている。

 ヤバい、タイプかも…

 そして心の奥に、秘かにウズウズと湧き出しつつある、エス的な衝動…

 そう、わたしは男に対してはなぜかエス的な衝動が湧いてくるのだ。

 しかし、まだまだ色々な条件がクリア出来ていない…
 わたしはそんな秘かな衝動を必死に押さえ、そして表にも出ないように心を抑えていた。

 しかし、そう、これは本当に偶然であったのだ…

「先生は、あ、すいません、ゆ、悠里さんは、もうバスケは?…」

「え、うん、まぁ色々とあってさ、今はね…」
 そう現状を説明している時に…

「今はね、あ…」
 偶然、組んでいた脚を崩した時、和哉くんもタイミングよく足を動かしたらしく…
 カウンターの下で脚同士が軽く触れ、少しだけ先の方で絡んだのである。

 わたしは脛とふくらはぎ辺りで、和哉くんのジーンズの感触を感じ、昂ぶりつつあった心が、そのわたしの敏感な脚が感じるという事であり…
 そして和哉くんもなぜか絡んだ足をそのまま動かさない。

「ぁ…」

「……」
 わたしが小さくビクッと震えたのに気付いたのだろうか、彼は黙ってわたしを見つめてくる。

「うん、い、今はね…」


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