12歳年下の彼に溺愛される話
第5章 芸術の秋…とかしてみたり
メイクの仕上げに、その
秋の新色のくすみレッドの
口紅を自分の唇の上に乗せた。
「え…、発色良すぎないかな?
唇だけ…自己主張…し過ぎてないかな?」
あまりにも想像してたよりも
色合いが強くですぎてて、
自分の肌から浮いてる気がする。
「ダメダメ、…ティッシュ…ッ」
上から畳んだティッシュで押さえて、
少しだけ色味と艶を落ち着かせると。
何時も自分が使って居るブラウンの
口紅を唇の内側の部分に塗って行く。
肌の色から浮いた感じが抑えられて、
何時もの口紅よりも赤味が入って、
冒険し過ぎない程度に秋らしさが加わる。
「これ位なら…大丈夫そう
うん、…良いかも…??
赤すぎないし、派手過ぎないし、
秋っぽい感じがするし…」
時計を見ると…まだ時間がある…。
「毛先だけ…ちょっと巻こうかな…」
このヘアアイロンだって、
妹が気に入らないからあげると
押し付けるようにしてくれた物だ。
前に妹が、私の部屋で
このヘアアイロンを見て。
巴姉まだこれ使ってたのって
驚かれてしまったんだけど、
別に毎日巻いたりしないから
そんなに傷んだりする事も無い。
だって…使えるし、まだ。
毛先だけ内側に巻くように…
ちょっとだけアイロンをして。
どうせ…知らない間に
巻いたのが、戻っちゃってるから。
気持ちの問題だろうとは思ってるんだけど、
出戻りの妹が言うには、
巻いた後に冷やさないから
すぐに取れるんだよって言ってたな…。
ちゃんと…説明して貰ったのに、
適当にはいはい言ってたから
聞いて置けば良かったな…千冬の話。
お姉ちゃんはスルーしないで
巻くからだとか…何とか言ってたけど。
私が、千冬をスルーしてたから、
それが何か…ちゃんと聞いて無かったや。
前に一回、千冬に巻いて貰った時
長持ちしてたもんな…巻いたのが。
そんな事を考えながら、
鏡を見て適当に崩しつつ、
ヘアスプレーをかける。
丁度巻き終わった頃に、インターフォンが鳴って。
約束をしていた9時の
5分前に、港斗が迎えに来てくれた。
ガチャとバックを持って玄関を開けると。
驚いた顔をした港斗君と
パチッと目が合ってしまった。