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らゔぃあん☆ぴーち!

第1章 ら

男手一つで私を育ててくれた愛すべきダメ親父から
「お前も17になったことだしさ」と
再婚話を切り出されたのは高校三年の夏休み。

私が小学生の頃に両親が離婚して以来
父子二人で暮らしてきた私達
17になったことだし、という区切りはよくわからないが

「別にいいよ、好きにしたら」

付き合ってる女がいたりいなかったりしてることはずっと前からわかっていたし
再婚することに対してどうこう言う気はない。
ダメ親父の人生だ
好きにしたらいいと思う。

「お父さんと結婚したい人なんているんだ」
「失礼だなー、俺モテるんだぞ」

ダメ親父は飲食店のオーナーをしていて金を持ってはいるが
私生活は恐ろしくぐーたらだ。

家にいる時はほぼカウチソファにだらりと寝そべり
死んだ魚のような目をしてポテチをむさぼり食いながら延々とゾンビ映画を見ているかホラーゲームをしている。
脱いだものは脱ぎっぱなし
使ったものは出しっぱなし。
記憶障害かと思うほど物忘れや勘違いが甚だしく
買い物やゴミ出しも満足に頼めない。

普段はちゃんとしているんだとダメ親父は言うが
普段とやらを見たことがないから
私にとってダメ親父は本当にダメ親父以外の何物でもない。

「こんなバツイチ男と結婚しようだなんて、もの好きな女もいるんだなーって思ってんだろ」
「うん」
「だよな。そういう顔してるよ」

私から視線を逸らしたダメ親父は遠い目をして

「こんな俺だけどさー、奥さんになってもいいって言ってくれる人がいるんだよ。俺も段々年取るしさ、落ち着いた穏やかーな、あったかーい家庭で幸せに暮らしたいんだよ」

今が殺伐とした冷たい家庭だとでも言いたいのか。
お前のせいだろうが。

ダメ親父は私の冷ややかな表情に気がついたのか

「いやいや、お前には小さい頃から苦労かけてさ、本当感謝してるよ。お前がこうしてしっかり者のおかんとして家を守ってくれたお陰で、俺は仕事に打ち込むことができた訳だしさ」
「誰がおかんだ」
「じゃあ、ママ」
「スナックか」

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