はなことば
第8章 Marigold《年下男子》
日が経ちついに土曜日_
約束の時間は19:00
凜夏「……服買っておけばよかったな」
どうしてこうなんだろう。
クローゼットの中にこんなに服があるのに
着る服がない
心惟「凜夏さん?」
凜夏「あっ、ごめん散らかして」
心惟「凜夏さん、ちょっと来て?」
凜夏「ん?」
そういうと
大きな紙袋から
白のワンピースとパンプスを取り出した
凜夏「これ…」
心惟「あげる。プレゼント。」
凜夏「え?」
心惟「住まわせてくれたお礼。
俺今日、出ていくからさ。」
凜夏「っ…」
心惟「ほら、着てみてよ。」
別の部屋に移動して
1人で着替え始めた
ワンピースのサイズも
パンプスのサイズもピッタリだった
鏡に映る姿に
思わず涙がこぼれる
これが……最後なんだ
.
心惟「凜夏さん、着れた?」
ドア越しに聞こえる彼の声
慌てて頬につたう涙を拭いた
ガチャ
凜夏「あっ、まだ…」
心惟「……凜夏さん」
凜夏「ありがとう…サイズピッタリだった」
泣いた顔がバレないように
笑顔で彼に話しかける
その時だった
彼は私の腕を引き
思いっきり抱きしめた
凜夏「え…っ…」
心惟「……少しだけ…少しだけで
このままでいさせて…」
ワンピースの背中のファスナーが開いたまま
彼は強く私を抱きしめる
凜夏「心惟…くん?」
心惟「似合う服なんて…買ってくるんじゃなかった」
凜夏「え?」
心惟「行かないで。…行かないでよ、凜夏さん。」
凜夏「心惟くん、どうしたの?」
抱きしめていた腕をそっと離し
顔を見合わせる
心惟「凜夏さん……」
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