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磯撫デ

第2章 取材ノート①

【7月11日(金)】

◯ 午前中、G氏宅
午前中に主要な用事を済ませるべくG氏宅を訪れる。
挨拶。海の男らしい無骨そうな髭面、よく焼けた身体が特徴的な壮年の男性だった。今は漁期ではないようでラッキーだった。取材を申し出ると、役所からも話がいっていたのか快諾。

以下取材メモ。(かなり方言が強いが、標準語での表記とした)
>このあたりに伝わる古い話があれば教えてほしい。
「なんでそんなのに興味が?」
>民俗学の収集を行っている。海に関わる伝承などを集めている。
「昔の?」
>いや、最近まことしやかに語られている話、などでも
(うーんとしばらく考え込み、G氏は首を振った。)

「特にあなたが知りたそうなことに覚えはない」
>それを知ってそうな人などはご存じないか?
「心当たりは、ないなあ」
(奥からG氏の細君と思しき女性がお茶と漬物を持って出てくる)

「あら、こんな辺鄙なところに取材と?何を聞きに?」
(G氏が明らかに細君を邪険に追い払おうとするが、細君構わず話し続ける)

>昔ながらの伝承とか、変わった話がないかと
「それなら鈴本さんとこのじいちゃんが詳しいよ」
「お前!あっちに行け!」
「あーはいはい・・・も、ほんとにこの人ったら」
(何故かG氏が狼狽したような様子を見せるが、細君は豪気なようで一向に気にしていない風だった)

このあと、2〜3言葉をかわしたが、G氏からは特に成果なし。

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