『春宵』
第1章 春宵(しゅんしょう)
1
「残業お疲れさま」
後ろから課長がそう声を掛けてきて…
スッと、周りから見えないように、わたしの机に黄色の付箋を置いてきた。
「はい、ありがとうございます」
わたしはさりげなくそう応え、こっそりその付箋を見る。
『○○H2203』
それは…
『○○ホテルの2203号室』
という逢瀬の意味。
メールでもなく…
LINEでもなく…
小さな付箋にての記し…
万が一、メールやLINEの消し忘れがあってはならないとの…
敢えての、アナログツール。
でもわたしは、その付箋を丸めては捨てずに、秘密のDiaryにこっそりと貼っておく。
それは、わたしにとっての忘れ難い心の記憶だから…
花のような、いつかは散ってしまう大切な思い出だから…
それを花びらの栞のように残しておきたいから…
「あと一時間くらいで終わりますから…」
「うん、そうか、わかった、お先に…」
それは一時間後の逢瀬への答え… そして…
先に待っているという応え。
だけどわたしは…
いつも…
ワザと…
その約束の時間には少しだけ遅れていくの…
だって…
少しでも夜は一緒に居たいから…
少しでも長くあなたに触れていたいから……
だって、もう春の夜は…
夜明けが早くなってきてるから………
「残業お疲れさま」
後ろから課長がそう声を掛けてきて…
スッと、周りから見えないように、わたしの机に黄色の付箋を置いてきた。
「はい、ありがとうございます」
わたしはさりげなくそう応え、こっそりその付箋を見る。
『○○H2203』
それは…
『○○ホテルの2203号室』
という逢瀬の意味。
メールでもなく…
LINEでもなく…
小さな付箋にての記し…
万が一、メールやLINEの消し忘れがあってはならないとの…
敢えての、アナログツール。
でもわたしは、その付箋を丸めては捨てずに、秘密のDiaryにこっそりと貼っておく。
それは、わたしにとっての忘れ難い心の記憶だから…
花のような、いつかは散ってしまう大切な思い出だから…
それを花びらの栞のように残しておきたいから…
「あと一時間くらいで終わりますから…」
「うん、そうか、わかった、お先に…」
それは一時間後の逢瀬への答え… そして…
先に待っているという応え。
だけどわたしは…
いつも…
ワザと…
その約束の時間には少しだけ遅れていくの…
だって…
少しでも夜は一緒に居たいから…
少しでも長くあなたに触れていたいから……
だって、もう春の夜は…
夜明けが早くなってきてるから………
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