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『春のうつろい』

第1章 春のにほい


『沈丁花の咲くころ…』


 梅 の凛とした甘さの香り
 桜 のほのかな淡い匂い
 沈丁花 の夜に濃くなる香り…

 それらは花の匂いであると同時に、どこか人肌を連想させてくるにほひ…

 春のにほひは…
 成熟しきる前の身体のように、
 まだ青さを残したまま、静かに誘う。

 沈丁花 の甘さは、夜に強まる。
 桜 はほとんど香らないが、視覚と混ざって幻の匂いを作り…
 梅 は凛とした青さを残し、静かに誘う。


 夜気の中に、沈丁花のにほひが滲んでいた。
 近づいたとき、彼女の髪からも、同じ甘さが立った気がした。



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