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蜜会…春の嵐

第1章 春の嵐

 4

「本当に懐かしいなぁ」
「う、うん、そ、そうね…」
「もう、あれから20年かぁ…」
「うん…」
 そう感慨を交わし、ビールのグラスを合わせる。

 その時わたしは…
 グラスを持つ彼の左手に、指輪がないことに気付いた。

「………」
 すると、そのわたしの視線に気付いた彼が…
「あ、コレか…」
 スッと左手をかざし…
「もう5年になるかなぁ…」
 一瞬、宙を見ながら、そう呟いた。

「うん、5年かな…」
 そしてわたしの左手を見てくる。

「あ……」
 わたしはドキンと高鳴らせ、慌てて左手を引く…
「あれ、美春も?」
「え、あ…う、うん………」
 わたしはうつむき、そう濁す。

 でも…
 それは、嘘であった……。

 今夜、初めて…
 ううん、今夜の再会の期待を抱き、15年越しに外したのだ。

 だけど…
 左指の指輪を外す意味…
 それは、あながち嘘ではない。

「そうかぁ、美春もかぁ……」

「……………」
 嘘ゆえに…
 はっきりとは頷けない。

「ま、そうだよなぁ、もう20年だもんなぁ…
 お互いにいろいろあるわなぁ……」

「ううん…22年……よ……」
 そう、颯太とは22年ぶり…
 高校を卒業して以来………

「あ、あぁ、うん、そ、そうか、そうだったなぁ……」

 もしも…
 あの成人式で再会できたならば……

 そう思うと、心の中が吹き荒れ…
 ザワザワと騒めき…
 グラスを持つ手が微かに震えてしまう。


「…っ…………」

 その時…
 テーブルの下で、彼、颯太の足が、触れ、絡まってきたのである。

「…ぁ………」
 すかさず彼を見る…
 だが…
「おおっ颯太ぁ、久しぶりだなぁ」
 同じ部活だった旧友がグラスを手に、声を掛けてきた。

「おっ、さっそく美春とも再会かぁ」
 そしてわたし達を認め、からかいの言葉も掛けてくる。

「あ、うん、ま、運命の再会ってやつよ」
「うひゃぁ、ま、飲めよ、久しぶりぃ…」
 三人ほどが集まり、代わる代わるグラスを交わしていく…

 だが…

 テーブルの下の脚はまだ、秘かに絡まったままであった。

 

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