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蜜会…五月雨

第3章 春の揺れ


 再燃した昂ぶりに揺れる心…


「さっき、電話が鳴ってたみたいだぞ…」

「…ほ、ほら、黙って抜けてきたから……」

 スマホを出そうと、バッグへと伸ばすわたしの左手の指先を見つめ…

「ふぅん………」
 
「え…」

 その目は、わたしの嘘に気づいた目…

「……………」

 その薬指には…
 今朝までの痕がしっかりと浮かんでいた。

「……う……ん……い、いいの…………」

「………そう……か…………」

 再び、バッグの中のスマホが震え…

「…………」

 わたしは、それを黙って見つめる。

「いいのか」

「う、うん………」

 それも嘘……

 揺らぐ想いを誤魔化すように、ふと、窓に目を向けると…

 夜景の煌めく夜空にひらひらと…
 散った桜が、夜風に舞っていた――


 春の舞い
 ひらひらごとに
 揺れし心
 すまし顔さえ
 熱を孕みて



 ブー、ブー、ブー…………

「……………」
 
 バッグの中で、三度目の着信が震えていた…
 
「……………」

 そして彼は、出ないわたしを黙って見つめ…

 ブー、ブー、ブー…………

「…………」

 何も言わずに立ち上がり…

 そのままトイレへ向かった……
 

 ブー、ブー、ブー…………

 だけど…

 今は、出たくない…


 鳴るたびに
 胸の奥まで
 揺らされて
 出れば壊れる
 指が震える



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