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蜜会…五月雨

第4章 五月雨(さみだれ)


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『今夜も逢いたいの』
 わたしはLINEを送る。

 あの夜から、何度目であろう…

 気付けば、指が動いている―――

『いつもより遅くなっちゃうけど』

『うん、今夜は少し遅くなっても大丈夫』

 そして、いつものホテルで―――

 わたしは、敢えてLINEで交わしていた…

 既読のままで、残す。

 そして支払いは…

 いつも同じカードにする…



 午後、家を出ると、季節の変わりを告げる雨が…

 そう…

 春の名残りの…
 
 サクラを散らす雨が…

 しとしとと、降っていた。

 それは、静かな雨―――


 わたしはいつも、ホテルに入る前に…
 ショッピングモールを散策する。

 そこで…

 高級な…

 高価な…

 派手で、煌びやかな品々を眺め…

 ショウウインドウに映る、自分の姿に重ねて見るの。

 そして、もうひとつの影も重なり…

 ガラスに映る自分を、見比べ…

 重ねて見るの―――

 そして、約束の時間のかなり前に、部屋へ訪れ…
 
 昨夜の余韻を入念に洗い、清め…

 きれいに自分を飾っていく。

 そして、彼を待つの―――

 だけど、今日のわたしの心の奥には、微かな影が、蠢いていた…

 それは…

 そう…

 今夜は、少しだけ、違う気がして…

 心の奥が、静かに騒めく。

 だから、今夜のわたしは、少しだけ遅く帰り…

 そして…

 いつもより、強く、甘く…

 香りのフレグランスを纏ってみるの…

 そう、いつもとは違う…

 残り香が、消えにくいものを―――


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