今宵だけは~秘められた人妻との密会
第16章 赤く染まる白肌(4)
「イったのかい……?」
耳元で囁くと、彼女は潤んだ瞳で僕を見つめ、
「うん……イった。かずくん、大好き……」と、とろけるような甘い声で愛を囁いた。
青い照明が、浴室を幻想的な、どこか退廃的な密室へと変えていく。浴槽に湛えられたお湯は深く青く染まり、その水面が有香の白い肌を艶めかしく照らし出している。
有香は、数人との経験だけで若くして結婚した自らの過去を振り返り、「もっと遊べばよかったかしら」と、湿り気を帯びた吐息とともに伏せ目がちに呟いた。
かつては週に3回あった夫との営みも、今では義務的な週に1度の儀式へと形を変えている。決して不満があるわけではないと言いながらも、彼女はいたずらっぽく微笑えむ。しかし、その微笑みの裏には、「女として見られたい、女を終わりたくない」という、40歳を目前にした彼女の内側に潜む、抗いがたい情動が静かに波打っているように感じた。
彼女が僕に身体を許したのは、僕が投げかけた「全部好き」という、剥き出しの全肯定の言葉に、家庭優先で過ごしてきた彼女の乾いた心が潤されたからだ。
「この関係はいつか絶対に壊れる。それは絶対に来るわ」。そう口にする彼女の瞳には、今の多幸感とは裏腹に、底知れぬ断絶への恐怖が宿っていた。
饒舌に未来の破局を語るその姿は、まるで自分自身に言い聞かせ、最悪の結末から心を守ろうとする幼子のような、悲しい自己防衛の現れのように見えた。
彼女は、「止めとけば良かった」という後悔を口にしながらも、僕から快楽を与えてもらう、その矛盾こそが、家庭という安寧を捨てきれず、されど「女を終わりたくない」と渇望する彼女の、身を焦がすような葛藤そのものだった。
有香が「別れを告げるときは、あなたのせいにする」と告げたのは、自分を保つためのあまりにも残酷で、それでいて切実な「愛の証」と僕は自己理解しようとした。自分が信じられなくなるほどの情欲に身を任せているからこそ、その罪のすべてを愛する男に背負わせ、自らは被害者として立ち去るしかない。そんな彼女の震えるような「業」が、湿った空気の中に溶け出していくのを感じた。
耳元で囁くと、彼女は潤んだ瞳で僕を見つめ、
「うん……イった。かずくん、大好き……」と、とろけるような甘い声で愛を囁いた。
青い照明が、浴室を幻想的な、どこか退廃的な密室へと変えていく。浴槽に湛えられたお湯は深く青く染まり、その水面が有香の白い肌を艶めかしく照らし出している。
有香は、数人との経験だけで若くして結婚した自らの過去を振り返り、「もっと遊べばよかったかしら」と、湿り気を帯びた吐息とともに伏せ目がちに呟いた。
かつては週に3回あった夫との営みも、今では義務的な週に1度の儀式へと形を変えている。決して不満があるわけではないと言いながらも、彼女はいたずらっぽく微笑えむ。しかし、その微笑みの裏には、「女として見られたい、女を終わりたくない」という、40歳を目前にした彼女の内側に潜む、抗いがたい情動が静かに波打っているように感じた。
彼女が僕に身体を許したのは、僕が投げかけた「全部好き」という、剥き出しの全肯定の言葉に、家庭優先で過ごしてきた彼女の乾いた心が潤されたからだ。
「この関係はいつか絶対に壊れる。それは絶対に来るわ」。そう口にする彼女の瞳には、今の多幸感とは裏腹に、底知れぬ断絶への恐怖が宿っていた。
饒舌に未来の破局を語るその姿は、まるで自分自身に言い聞かせ、最悪の結末から心を守ろうとする幼子のような、悲しい自己防衛の現れのように見えた。
彼女は、「止めとけば良かった」という後悔を口にしながらも、僕から快楽を与えてもらう、その矛盾こそが、家庭という安寧を捨てきれず、されど「女を終わりたくない」と渇望する彼女の、身を焦がすような葛藤そのものだった。
有香が「別れを告げるときは、あなたのせいにする」と告げたのは、自分を保つためのあまりにも残酷で、それでいて切実な「愛の証」と僕は自己理解しようとした。自分が信じられなくなるほどの情欲に身を任せているからこそ、その罪のすべてを愛する男に背負わせ、自らは被害者として立ち去るしかない。そんな彼女の震えるような「業」が、湿った空気の中に溶け出していくのを感じた。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える