ヒュリカ ~僕だけをみて~
第3章 誘拐
その仕事も板に付いてきて
楓や桜の大樹の梢はもうほんのりと紅みがかかっていて、春の喜びに満ち溢れていた3月の始め
悲劇が起こった
【トラック轢き逃げ、○○運搬の社長らが謝罪】
小さく新聞に載っていた
被害の名前は幸いイニシャルでしか載っていなかったので、学校中に広まることはなかった
でも多分きっと、クラスの人にはバレてたと思う
お葬式には○○運搬の社長さんたちも参列してたから
慰謝料として沢山のお金を貰った
でも、胡桃はあんまり使いたくなかった
お金の代わりに母を取られたような気がして嫌だった
『お母さん…‼』
さみしさが込み上げる
『うぅ…っ…うっ…ヒック…ヒック……』
涙と鼻水が止めどなく流れた
もういなくなってから三ヶ月も経っているというのに
ポタポタと落ちる悲しさの雫
誰も拭い去ることのできない虚しさが胸の中に拡がる
…………………
……ダメダメ、胡桃
こんなんじゃ…お母さんに笑われちゃう
もっとしっかりしなきゃ
明るく、前向きに!
胡桃はパチンと頬を叩くと
笑顔を作った
大丈夫!!!!