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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 相手からの返答を待って通話を終了させる。

 携帯を閉じて、ふう、と白い息を吐き出した。

 かじかんだ手をセーターの中にしまい込み、つぶやく。


「愛美が喜ぶかなーと思って誘ったんだけどな」


 純粋に、一度は過ごしたことのある高校の文化祭を楽しんで欲しいというのも理由の一つではあるけれど、今回わざわざ愛美を呼ぼうとしたのには別の理由があった。

 クラスの催し物を彼女に見てほしかったのだ。

 せっかくクラスを盛り上げる為にと嫌がる彼を無理矢理祀り上げ、大役を押し付けたのに。


「仕方ない。写メでも撮って送ろうかな」


 どうしても、彼を好きだと言っていた愛美に見せてあげたかった。

 おせっかいすぎる自分の性格に呆れながらも、明は再び携帯を開いた。

 撮影モードに設定し、窓越しの夕陽を一枚撮る。試し撮りのつもりだった。

 あと一ヶ月ほどで文化祭が始まる。

 鮮やかに写るオレンジ色を見つめながら、明は何かを企むように唇の端を吊り上げた――。

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