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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 同時にキスされる。

 息も白く凍るような冷気の中で、晃の唇の温かさにほっとする。ほっとしてしまう。


「……ばーか」

「ん?」

「ばーかっつってんだよ!」

「もういいよ、ばかでもなんでも」


 晃は苦笑する。その表情に、結局また負けた気がしてしまう。けれどこの敗北感は、決して不快なものではないのだ。いつだって。

 晃はもう一度宵の唇にキスをした。強引で激しいものではなく、柔らかな慈愛に満ちたキス。

 それだけで苛立ちが消えていく。自分でも単純すぎるだろうとは思うが、もうどうしようもなかった。


「そろそろ、後夜祭も終わる頃、かな」


 唇を離し、晃が言う。


「みんなのとこに戻る? それともこのまま帰っちゃう?」
「帰る前にこの服明に返さねーと。俺の服女子更衣室だし」

「……なんでそんなとこに」

「そこでメイク直したからだって、別になんもやましいことしてねーよ」


 晃にじとっとした目を向けられ、宵が弁明する。

 それからふと思い出して言った。


「……つか、今回一番被害をこうむったのって、明だよな」

「ああ、手首ねー。かなりきつく握っちゃったからなぁ。明ちゃん、大丈夫そうだった?」

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