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Memory of Night 番外編

第2章 Episode of YOI


 愛美はうつむき気味だった視線を大袈裟な仕草で持ち上げた。

 せっかく馴染めたクラスにも、微妙な恋心にも心残りはあるけれど、いつまでもめそめそしてはいられない。

 ぐっと伸びをし肩に掛けた学生鞄を持ち直そうとした時。


「愛美ーっ!!」


 突然背後から名前を呼ばれ、愛美が振り返る。

 全速力でかけてくる明の姿を捉え、驚きに瞳を見開いた。

 立ち止まって呆気にとられている愛美の隣で立ち止まり、明は両膝に手を置いてぜーはーと全身で息をしている。


「……どうしたの? 明ちゃん家向こうじゃ……」

「は……っ、待……って!」


 まだ呼吸が整わないらしい。

 明は右手を愛美の顔の前で開き、ちょっと待っての合図。

 言われるままにしばらく待って、ようやく落ち着いたらしい明は上体を起こした。


「愛美の話途中だったし。気になったから」


 そこで明はにやっと笑ってみせる。


「ニュースなんてまた夜やるし、最後まで話してよ」


 手を引かれて促され、愛美は頷くしかなかった。

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