All Arounder
第29章 I Will Wait Till You Come
『あたしは大志と一緒にいたいの…!!』
黒羽の動きが、ピタリと止まった
『だからあたしは…戻らない…』
「…そうですか」
部屋の中は暗かった
だからこの時、黒羽が一体どんな顔をしていたのか
全く見当もつかないけれど…
気がつけばあたしはベッドに押し倒され、すぐ目の前には黒羽の顔が見えた
「そこまであの男が好きなのですか」
『え…黒羽…?』
「こちらの身にもなってください
惚れた女性に他の男のことを話されるのが、どれほど惨めな気持ちか…」
黒羽の手は、そっと姫の髪を撫でた
『何…言ってるの?』
「鈍い方ですね…少しは自覚してはいかがですか?」
黒羽の気持ちが
全くわからなかった
怒っているのか、楽しんでいるのか
悲しんでいるのか、遊んでいるだけなのか…
『黒羽…』
「そうやって私の名前を呼ぶから、悪いんですよ」
親指は、姫の下唇をキュッと下げる
「大志なんて…頭に浮かんで来なくなるくらい、私に溺れていけばいい」
その瞬間、口を塞がれた
『…!!』
容赦なく、温かい舌が口の中へと進入してくる