テキストサイズ

All Arounder

第29章 I Will Wait Till You Come




姫は大志の体にしがみついた




「っ…姫…」




『殴ったり…しないで…』




大志の服を掴む手に、ギュッと力が入る


大志はゆっくりと腕を下ろした



『黒羽…何でこんなこと…?』



姫が黒羽の方へ向き直ると、黒羽は姫を突き飛ばした




『っ…!!』




「てめぇいい加減にしやがれ!!」



大志は姫の体を支えながら、黒羽に向かって怒鳴った




しかし黒羽は、冷たく姫を見下す




『黒羽ぁ…』





「ネックレス、渡してもらえますか?」




『え…』




握りしめていた手をそっと上げると、黒羽はネックレスを奪い取った




「この財産は…全て私がもらいますね」




人を馬鹿にするような黒羽の微笑みに、姫は唇を強く噛んだ




「お嬢様がどうなさろうと…勝手にしてください
私は屋敷へ戻ります」




『…』




「クロ…てめぇふざけたこと…」




黒羽はそれを無視し、部屋を出ていこうとした





『黒羽…』





自分を呼び止める声に、思わず足を止めた




顔だけちらっと姫へ向けると、姫の頬には一筋の涙が伝っていた






『黒羽も最初から…お金目当てだったの…?』





「…」





黒羽は扉を少し開け






「…当たり前でしょう」







部屋を出ていった











『っ…えっく…ぅ…えぇえぇん…』




泣き崩れる姫の背中を、大志は黙ってさすってやった











ストーリーメニュー

TOPTOPへ