All Arounder
第6章 Expressionless Princess
ロープを手にしている男は、ジリジリと西浦姫に近づいて行った
「声一つ出さないのか…?
度胸だけは褒めてやるよ」
『…』
怯えるでもなく
睨むでもなく
西浦姫はまっすぐ男を見ていた
その瞳には何も映ってないのではないのか…
と思えるほど透き通った目に
男は微かに身震いする
「不気味な女だ…」
ロープが西浦姫の首に掛かりそうになった瞬間だった
「させっか馬鹿野郎があ!!!」
その声とともに、男は顎にとんでもない衝撃を受けた
白目を向いて、男は後ろに倒れてしまった
大志は手をパンパンと払い、立ち上がった
「てめぇら、人の報酬横取りなんてしてんじゃねぇぞ」
眼前には、他に男が3人
たいした数ではない
『…』
ふと気になって後ろを振り返った
しかし、やはり西浦姫は無表情なままだった
…感情がねぇのか、この姫さんは…
「ぅおおお!!!」
隙を見せた大志に向かって、他の男たちが襲い掛かった
「っせぇよ!!!」
大志は前に向き直ると、全員の顎目掛けて殴り飛ばした
男たちは顎に受けた衝撃によって頭を揺すられ
気絶はしなかったが
立ち上がることが出来なくなった
全員動けなくなったのを目で確認すると
大志は姫に手を出した
「来い」
『殺されるの?』
「いいから」
大志は姫の腕を掴み、部屋の真ん中まで連れて来させた