All Arounder
第7章 Make Me Smile
『…』
姫は目を覚ました
自分がどこにいるのか把握出来ているのか、
ただ単に顔に出さないだけかはわからないが
無反応でソファーから起き上がった
「おはよ」
せっかくだから、挨拶くらいはしてやった
『…』
無視されたが…
「おい」
『…』
「おい、西浦」
『…』
「…姫」
『何?』
こいつ…名前にしか反応しやがらねぇ…
若干むかつくなぁ
「今日、お前を依頼人に引き渡す
1億掛かってんだから、逃げようだなんてすんじゃねぇぞ」
『…1億?』
姫は少し首を傾げた
「ああ、お前の誘拐を成功させて、やっと手に入る1億だからな」
大志はカウンターチェアに腰掛けた
そんな大志を、姫はじっと見る
『All Arounderって、お金で動くんだ…』
「はあ?」
姫の言い草に腹が立ったが、確かにその通り
金で動くのに違いはない
「文句あんのか?」
『文句なんて言ってない』
眉ひとつ動かさない…
人間こんなに表情を変えずにいたら
逆におかしくなっちまいそうだ
「…4時までに、何かしておきたいことはあるか?」
そう…
4時にはもう依頼人の手に渡ってしまうのだ
そうなってしまえば、まず無事でいられるなんてことは出来ないだろう
そうなる前に、何かやり残したことをさせてやるのが
せめてもの情けだろう…と、思ったのだ