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All Arounder

第9章 A Couple of Night



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大志が自分の部屋で漫画を読んでいると、姫が入って来た


『お風呂、入った』


「ん、わかった…」


と、漫画を置いて顔を上げると、ついつい姫に見とれてしまった


さっきまでと違って、濡れた髪が色っぽく
のぼせたのかポワッと赤い頬が可愛らしかった



『…何?』



「なっ、何もねぇよ///」


顔を背け、床に座った



「オレは地面で寝っから、お前はベッド使っとけ」



『…いいの?』



「ああ」



姫は、肩に掛けたタオルで軽く髪を拭いた


動作ひとつするだけで、シャンプーのいい香りがした



そのままベッドに腰掛けると、こう言ったのだ



『…いい家族だね』





「は?」



『大志の家族、みんなすごくいい人たちだよ』



「…少なくとも、親父は良くねぇ」



大志の言葉に、姫は首を振った



『ううん、羨ましい…』




どこか切なげな目をして、姫は頭を垂れた




「…お前の両親は?」



『お母さんは、あたしが小さい頃に死んだ
お父様も、もういない』




「…そっか」




何と答えていいか、わからなかった



自分にとっては、いて当たり前の親がいない気持ちってのが


理解しようにも出来なかったからだ





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