狼と白頭巾ちゃん
第15章 一輪の花
…それは、ライラがシンに会いに行かなくなってから、五日目の、朝のことだった。
ライラが眠りから覚め、ふと窓を見たとき、そこには一輪の花が置いてあった。
彼女の部屋は二階にあり、不思議に思ったライラは窓に近づいた。
窓を開け手に取ってみると、それは、シンに連れられて行った花園に咲いていた花だった。
(シンが…、これ、を…?)
しかしライラの家は森から離れた村の中にあり、また、シンは人に姿を見られることを恐れている。
シンの筈は無い。
けれど、まさか…と思いつつ、花を置いたのがシンであればいいとライラは思っていた。
差出人不明の花は、それから毎日ライラの部屋の窓辺に届けられた。
花の季節が過ぎると、代わりに、珍しい木の実や綺麗な石が置かれるようになり、
それらは彼女の部屋に飾られ、部屋に彩りを与えていた。
いつしかライラは、朝の贈り物を楽しみに待つようになり、それと共に、贈り主がシンであると云う確信的な思いが生まれていた。
それを心から嬉しく思い、
けれど、あの日からシンに会いに行けないでいることで、彼を傷付けているであろうことや、
次にシンに会った時、それまで通り振る舞えるかを考えると、
ライラはやはり、小道に向かうことが出来ず、
気付けば一ヶ月が過ぎていたのだった。
それから最近になって、村の近くで大きな獣に出くわしたという人が現れた。