おとなりさま
第2章 遠くに行きたい
僕が、エミルを苦手になったきっかけ。
それは僕自身の所為。
大人になってみて、そう感じた。
幼い僕の、小さい嫉妬。
小学生の頃、僕の同級生が
エミルを可愛いと言った。
中学生の頃、クラスメイトが
エミルを好きだと言った。
なんだか自分の持ち物を
盗られるような気分だった。
いやいや、エミルは持ち物じゃないよ。
何て馬鹿な考えだ。
しっかりしろ、自分。
ペチペチと自分の頬を叩く。
隣のあの子の反応を見てみると、
ニコニコと微笑んで一言、『ありがとう』。
そいつらに向けられたその笑顔を見たら、
無性に腹がたったのだ。
それからだ。
僕はエミルを避けはじめた。
幼い僕の、ただの嫉妬心。
最も、彼女には幾らかも効いていないようだけれど。