
君がくれたぬくもり
第28章 選択
――――AM10:00
荷物をまとめ、マンションをでる。
輝雄と手を繋ぎ、駐車場まで歩いた。
輝雄の車……
いつも陽菜の好きな音楽が流れている車。
これに乗るのも今日で最後…
「乗って?」
「うん…」
輝雄に言われ、助手席に乗る。
数分後、
車は見慣れた道に止まった。
「着いたよ。」
家までの道のりはびっくりするくらい短かく感じた。
輝雄は車を出て助手席に回る。
―――ガチャ
「…さ、帰る時間だよ?」
ニッコリ笑い、手を差し出す。
陽菜は黙ってその手を握った。
外の空気はひんやりと冷たかった。
「じゃあ俺は行くね。」
「うん。輝雄、ありがとう。」
「言っとくけど、さよならは言わないからね。
陽菜にもし何かあったら飛んでいくつもりだから!」
いつもの輝雄の冗談に陽菜は思わず吹き出した。
