
君がくれたぬくもり
第30章 オレンジ
すっかり明るくなった頃、岳はクルリと方向転換した。
「帰ろっか…」
陽菜の横を通り、バイクのあるところに向かう岳。
いや……
行かないで……
「岳っ……」
咄嗟にコートの裾を掴んだ。
びっくりしている岳。
………あ
「ご…ごめん……」
慌てて手を離す。
何やってるんだろう…
さっき現実を認めなきゃって思ったばかりじゃない。
こんなことしても迷惑なだけなのに…
岳はもう戻ってこないのに…。
「陽菜……?」
それでも……
やっぱり岳が好きなんだ………。
「ねぇ……もう陽菜のこと、何とも思ってないの…?」
「………。」
何も言わない岳。
答えは分かってる。
陽菜の期待してる答えなんてかえってこないんだ…。
「…ごめん……」
岳はボソッとそう言った。
