
Sカレっ
第10章 夜
中庭から出ると、月明かりが照らす薄暗い宿の廊下に、瀬川が立っていた。
神様が、今だよって言わんばかりに、タイミングが良い。
「………」
「…瀬川」
瀬川と真正面に向き合う。
心臓がバクバクして、これから言うことを考えるともっとバクバクして、ヤバい。
「足、もう大丈夫か?」
「えっ?ぁ…うん。湿布貼ってるし、ありがとう」
「そぅか。じゃ……」
そのまますれ違いそうになる。
あわてて、一言。
「ぁっ…す、好き!!」
沈黙。
「好き………」
返事はない。
暗がりに瀬川は振り向き、あたしを見た。
「………ぇと…」
何を言えばいいのかわからず、真っ赤になる。
恥ずかしくて、涙が出そうになった。
でも、ぐっと我慢し、もう一度言う。
「…好き、です……」
涙が一粒、頬を伝う。
あたしは唇を噛み締め、瀬川を見る。
「………俺は、」
返事が返ってきた。
「お前に告ったクセに、まだ元カノを思い出す。…もう二年になるのにな」
元カノ…
やっぱり、まだその人を……
「だけど、もう他の奴を好きになってもいいよな……??」
そして、いきなり瀬川はあたしの手を引っ張り、自分へと抱き寄せた。
「っ…瀬川??」
「俺もだ。江奈が好きだ。俺の、彼女になってください」
あたしは、また涙をこぼした。
「…はいっ…」
