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第2章 case1 【貴方ハ誰?】

「君もお帰り」

そう言われると同時に身体の自由が戻ったのが解った。

「帰るわよっ」

ホッとすると同時に、目の前の得体の知れない男の存在を再自覚して、寒気を覚える。

「ここの事は他言無用」

「その前に二度と貴方とは会わないわ!」

そう宣言したのに、彼は高らかに笑ってみせた。

踵を返し、小走りで部屋を後にする私の後で、彼の声が追いかけてきた。

「わたしから、逃れることは、出来ないけれど、ね」

姿は見えないのに、そう言った声だけが、耳に届いて・・・、

ゾッとしつつ・・・それでも後ろを振り返ることなく逃げ続けた。

自分自身の、寮の部屋まで。

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