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完熟の森

第28章 君を乗せて

「ひゃあ~」


雫がガタガタ道に叫んだ。


「大丈夫、しっかり捕まって」


腰にあった雫の手がギュッと力が入った。


ようやく森を抜け、舗装された道路に出ると、雫の手が緩んだ。


自転車は真っ直ぐ走り出す。


「千晶、私自転車乗るの10年振りぐらい」


自転車は風に乗って夕暮れの中を加速した。


「気持ち良い」


「毎日でも乗せてやる」


雫は僕の腰に回した手を少し握り直し、僕の背中に頭をもたれた。

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