ガーディスト~君ヲ守ル~
第5章 姿をうつすもの
なによ…
なによ…
なによ…!!!
私が悪いっていうの?!
こんなところで男を誘惑してるアンタが悪いんじゃない!!!
私をいつもバカにして…!!!
許さないわ…
「尾形さん?」
隣から声をかけられ、メガネの女性はビクッとした。
振り向くと、同僚の前田がいた。
「いつも思うんだけど、しょっちゅうロッカー開けてるよね?」
「え…っ…」
「なんか隠してるの?」
そう言って前田は、尾形のロッカーを覗こうとする。
「覗かないで!!」
尾形はバンッと勢いよく扉を閉めた。
鍵をかけ、部屋を出て行く。
「なにあれ?ほんっと…気持ち悪い人」
(はぁ~…お腹すいた…)
つぐみはお腹を手で抑えた。
あまり余裕がないので、今日のお昼はおにぎり一個のみ。
朝も食べる気がせず、カロリーメイトで済ませていた。
「東さん、どうしたの?顔色悪いよ?」
隣に座る同じバイトの女性、佐藤が声をかけてくれる。
「いえっ…大丈夫です…」
(集中しなきゃ…)
つぐみは気を取り直し、パソコンに向かう。
データを打ち込みながら、ふと祐司のことを思い出した。
さっき会った時に言えなかった…
頼れるのは村上さんしかいないって…。
自分から断ったくせに…
きっと呆れてるだろうなぁ…
はぁ、とつぐみはため息をついた。
「東さん、このファイル棚にしまってきてくれる?」
ドンッと机の上に大量のファイルが置かれた。
「あ、はい…」
雑用も新人の仕事だ。
つぐみは席を立って、ファイルを持とうとする。
瞬間、ぐにゃぁ…と視界が歪んだ。
(あ、れ…?)
ドサッ…
つぐみは床に倒れてしまう。
バサバサと、辺りにファイルが散らばった。
「東さん?!!」
目の前で倒れたつぐみにかけ寄る佐藤。
「誰かっ…運べる人いませんか!?」
周りを見渡す前に、目の前をスーツ姿の男性が現れた。
「俺が連れて行きます、医務室に案内してくれますか?」
そう言いながら、つぐみを抱きかかえたのは、祐司だった。