南の龍
第10章 缶けり
やっと夏休みに入った。
夏休みといえば、アイスを片手にゴロゴロしてるのに限る。
まず、それしかあり得ない。
このむし暑い中外を歩き回るなんてありえない。
やるやつは神経が狂ってると思う。
……─なのになぜ私は今学校のグラウンドで一人空き缶を眺めながら数を数えているのだろう。
「28…29…30…」
辺りはしんとしている。
と言うことは夏では滅多にない。
蝉の鳴き声が耳にまとわりついている。
「……暑い」
何もしていないのに汗が出てくる。
だから、夏は嫌いなのだ。
いっそこのまま家に帰ってしまおうか。