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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第5章 天上の苑(その)

 下働き時代の姿もあれはあれで清楚で美しかったが、今の浄蓮はまさに輝くばかりの美しさで、たまにその艶姿を見た客たちから
―眼も眩むようだ。
 と、讃辞を得ている。
 早くもこの新しい見習いをいずれ水揚げしたいと申込みが殺到し、その中には朝廷でも名の知れた高官や漢陽一と謳われる大商人など錚々たる顔ぶれが名を連ねていた。
 しかし、翠月楼の女将は、この見習い妓生をいつ独り立ちさせるかどうかについては触れず、曖昧な笑顔で客たちを煙に巻くだけである。
 準基と無理やり引き離される形で別れてから、一ヵ月経っている。
 見習いとして見世に出る話が正式に決まったのは、まだつい数日前のことだ。
 女将が考えてくれた源氏名は〝香月(ヒヤンオル)〟。女として生まれ変わってから、二つめの名前だ。まさに、蛹が蝶になるように、美しく艶やかになってゆく浄蓮には、ふさわしい名前である。
 準基との別離は、浄蓮に深い傷を与えたが、同時に新たな発見もあった。
 女将サムウォルが意外にも浄蓮を心から想っていてくれたことだ。ひと月前、無断で準基と天上苑まで遠乗りに出かけた日、帰ってきた浄蓮を女将はぶった。けれど、あのときの女将は相当取り乱したらしく、靴も履いていなかった。
 おまけに、女将はその後、浄蓮を抱きしめ、大泣きしたのだ。意地っ張りな自分には、もう女将は愛想を尽かしているとばかり思っていたのに、女将は厳しすぎるほどの態度の裏で、浄蓮を娘のように案じていたのである。
 自分の身を案じてくれているのは秀龍と準基だけではなかった。
 そう思った時、浄蓮は心が温かなもので満たされてゆくのを感じた。
 あの後、女将の稽古は再開したものの、相変わらずというよりは、以前にも増して厳しい叱声が飛んでくる。

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