麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】
第5章 天上の苑(その)
「誰かしら。皇家の若さま?」
秀龍は数日前に来たばかりだ。科挙受験で忙しい身だから、幾ら何でも、次に来るのはもう少し先だろう。
だが、秀龍以外には自分を訪ねてくる者はいない。
もしや、と、浄蓮の胸が轟いた。
もう後ろは振り向きもせず、チマの裾を翻して階段を駆け下りてゆくその後ろ姿を見送り、明月が吐息をついた。
「やっぱり、勘違いしてるわ、あの子。人の話をよく聞けば良いのに」
「失礼致します」
廊下で声をかけてから扉を開けると、座っている男の後ろ姿が見えた。
細身ですらりとしたその姿はやはり―。
歓びに勇んで部屋に入り、男の前に立つ。
「ようこそ、おいで下さいました」
とりあえず拝礼(クンジヨル)をしようと、両手を組んで眼の高さに持ち上げた時、初めて男の顔が眼に入った。
「―?」
その客の顔を真正面から眼にした瞬間、浄蓮は息を呑んだ。そのヒュッという小さな音が静寂のひろがる室内に聞こえ、かなり居心地の悪い想いをすることになる。
客だという男はまだ若かった。年代的には、確かに準基と同じくらいだろう。
しかし、男にしては優しい顔立ちをしていた準基とは似ても似つかず、太すぎるほどの眉、意思の強そうな光を放つ双眸と、その容貌は似ても似つかない。梁ファンジョンには及ばないが、この男もなかなか個性的で強烈な面構えだ。
相手の男はといえば、もう大きなどんぐり眼を更に大きく見開き、惚けたように浄蓮を見つめている。
この男が浄蓮に見惚れているのは紛れもない事実であったが、浄蓮にとっては問題ではなかった。
秀龍は数日前に来たばかりだ。科挙受験で忙しい身だから、幾ら何でも、次に来るのはもう少し先だろう。
だが、秀龍以外には自分を訪ねてくる者はいない。
もしや、と、浄蓮の胸が轟いた。
もう後ろは振り向きもせず、チマの裾を翻して階段を駆け下りてゆくその後ろ姿を見送り、明月が吐息をついた。
「やっぱり、勘違いしてるわ、あの子。人の話をよく聞けば良いのに」
「失礼致します」
廊下で声をかけてから扉を開けると、座っている男の後ろ姿が見えた。
細身ですらりとしたその姿はやはり―。
歓びに勇んで部屋に入り、男の前に立つ。
「ようこそ、おいで下さいました」
とりあえず拝礼(クンジヨル)をしようと、両手を組んで眼の高さに持ち上げた時、初めて男の顔が眼に入った。
「―?」
その客の顔を真正面から眼にした瞬間、浄蓮は息を呑んだ。そのヒュッという小さな音が静寂のひろがる室内に聞こえ、かなり居心地の悪い想いをすることになる。
客だという男はまだ若かった。年代的には、確かに準基と同じくらいだろう。
しかし、男にしては優しい顔立ちをしていた準基とは似ても似つかず、太すぎるほどの眉、意思の強そうな光を放つ双眸と、その容貌は似ても似つかない。梁ファンジョンには及ばないが、この男もなかなか個性的で強烈な面構えだ。
相手の男はといえば、もう大きなどんぐり眼を更に大きく見開き、惚けたように浄蓮を見つめている。
この男が浄蓮に見惚れているのは紛れもない事実であったが、浄蓮にとっては問題ではなかった。