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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第2章 麗しの蓮の姫

「それは」
 浄蓮はやっと準基の言わんとしていることを察した。妓生は綺麗な服を身に纏い、客の男たちに媚を売り、身体を売る。売れっ妓ともなれば、一夜に何人かの客を掛け持ちすることもあるという。
 華やかな暮らしの裏にある苛酷な現実を理解しているのか? 準基はそう言いたかったのだ。
「単に綺麗な衣装を着られるだけが妓生のすべてではない。言いにくいことを言うが、慕ってもおらぬ男に身を任せねばならないのもまた、妓生の生業(なりわい)だ。そなたは、そこまで判った上で、翠月楼にいるのか?」
「それは―、私だってちゃんと理解しています。もう、幼い子どもではありませんから」
「ならば! そなたは見も知らぬ酔客に抱かれることに抵抗はないのか?」
 烈しい語気で迫る準基に、浄蓮は持ち前の勝ち気さがとうとう爆発した。
「私は安易に誰にでも身を任せるような安っぽい妓生にはなりません。客に選ばれるのではなく、客を選べるような妓生になって見せます。それに、どうして、旦那さまがいちいち私のすることに、そこまで口出しなさるのですか? 私は今まで誰の指図も受けませんし、これから先も自分の思うように生きてゆきます」
「―」
 準基が言葉を失った。
 ややあって、ポツリと呟く。
「そなたはまだ苦界というものを知らぬゆえ、そのような怖れ知らずが言えるのだ。そなたの申すように、客に選ばれるのではなく客を選べるほどにまでなるのは生半(なまなか)ではない。もし、そなたが真、そのような妓生になれば、浄蓮、私をただ一人の男として認め、受け容れてくれるか?」
 浄蓮が黒い冴え冴えと濡れた瞳を瞠った。
「そんなこと、今からお約束はできません。だって、旦那さまと私はたった今、出逢ったばかりですもの。私は旦那さまのことを何一つ知りませんし、旦那さまだって、私について何もご存じないじゃありませんか」

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