麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】
第3章 孤独な貴公子
その辺のところをよおく肝に銘じておおき」
はい、と、浄蓮は殊勝に頷いて下がった。
階段をゆっくりと降りていっていると、下の方にチェウォルが訳知り顔で立っている。
チェウォルも明月も昨日の梁ファンジョンの宴席に侍っていた妓生たちである。この妓房ではもう一人、チェウォルと同年の妓生がいるが、チェウォルの方が数ヵ月早い生まれなので、ここでは先輩となる。
昨日は常識知らずのファンジョンのお陰で、一時、気まずい雰囲気になったものの、普段は割とよく話もする間柄だ。
普通、しょっ中、廓に入り浸っていれば、この世界での常識、客としていかにふるまうべきかを自ずと身につけているものだが、ファンジョンは〝通〟どころか、無粋極まりない。
「大分、しごかれたみたいね」
小声で囁かれ、浄蓮は肩を竦めて頷いた。
「はい、それはもう、たっぷりと」
大袈裟な物言いがおかしかったのか、チェウォルはクスクスと笑いながら言った。
「階下(した)に皇氏の若さまがお見えだよ。本当にもう、嫌な娘(こ)よね。あれほど良い男がいながら、任氏の若さままで今度は手玉に取るなんて」
「ちょ、ちょっと。チェウォル姐さん、そういう言い方は止めて下さいといつも言ってるでしょう。皇氏の若さまとは、そういう仲じゃないんですって何度言ったら判って貰えるんですか?」
浄蓮がムキになるほど、チェウォルの笑い声が高くなる。コホンと、二階から女将のわざとらしい咳払いが聞こえ―。
若い二人の娘たちは気顔を見合わせた。
「女将さんが怒ってるわ。じゃあ、あたし、行くね。あんたも早く行って上げな。若さまは、もう一刻も同じ場所でお待ちだからね。あたしが幾ら上がったらって勧めても、顔を紅くして〝結構です〟ってさ。全く二十歳にもなって、いまだに妓房に上がったこともないだなんて、今時、珍しいを通り越して、どこかおかしいんじゃないかって思っちゃうくらい」
はい、と、浄蓮は殊勝に頷いて下がった。
階段をゆっくりと降りていっていると、下の方にチェウォルが訳知り顔で立っている。
チェウォルも明月も昨日の梁ファンジョンの宴席に侍っていた妓生たちである。この妓房ではもう一人、チェウォルと同年の妓生がいるが、チェウォルの方が数ヵ月早い生まれなので、ここでは先輩となる。
昨日は常識知らずのファンジョンのお陰で、一時、気まずい雰囲気になったものの、普段は割とよく話もする間柄だ。
普通、しょっ中、廓に入り浸っていれば、この世界での常識、客としていかにふるまうべきかを自ずと身につけているものだが、ファンジョンは〝通〟どころか、無粋極まりない。
「大分、しごかれたみたいね」
小声で囁かれ、浄蓮は肩を竦めて頷いた。
「はい、それはもう、たっぷりと」
大袈裟な物言いがおかしかったのか、チェウォルはクスクスと笑いながら言った。
「階下(した)に皇氏の若さまがお見えだよ。本当にもう、嫌な娘(こ)よね。あれほど良い男がいながら、任氏の若さままで今度は手玉に取るなんて」
「ちょ、ちょっと。チェウォル姐さん、そういう言い方は止めて下さいといつも言ってるでしょう。皇氏の若さまとは、そういう仲じゃないんですって何度言ったら判って貰えるんですか?」
浄蓮がムキになるほど、チェウォルの笑い声が高くなる。コホンと、二階から女将のわざとらしい咳払いが聞こえ―。
若い二人の娘たちは気顔を見合わせた。
「女将さんが怒ってるわ。じゃあ、あたし、行くね。あんたも早く行って上げな。若さまは、もう一刻も同じ場所でお待ちだからね。あたしが幾ら上がったらって勧めても、顔を紅くして〝結構です〟ってさ。全く二十歳にもなって、いまだに妓房に上がったこともないだなんて、今時、珍しいを通り越して、どこかおかしいんじゃないかって思っちゃうくらい」