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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第1章 序章

―私には、出逢ったそのときから、ずっと、そなたがこの蓮の花のように思えてならないよ。
 そう囁いたあの男はもうこの世にはいない。浄連の手の届かない遠い先へと逝ってしまった。
 一旦、溢れ出した涙はなかなか止まらない。
 優美な容姿とは全くそぐわない粗暴さでごしごしと手の甲で涙を拭った。
 もう、いやだ。
 あの人のいなくなったこの世になんて、これ以上、生きていたくはない。
 浄蓮は意を決したように、水面を見つめる。
 清純な薄紅色の花たちが、優しく自分を差し招いているたくさんの手のように見え、浄蓮は花に誘われるように、ふらりと立ち上がった。

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