麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】
第3章 孤独な貴公子
と、ふいに秀龍が表情を引きしめた。
「だがな、私はお前が本当に女だったならと思うことがある。お前が本物の女ならば、私は妓房などには絶対に入るのを許さなかったし、妻に迎えるという形でお前を一生涯、守ってやれた」
「何を惚(ほう)けたことを言ってるのさ、兄貴。仮に俺が女だったとしても、兄貴は俺を〝女〟としては見ないさ。俺はあくまでも申明賢の弟、つまり、兄貴にとっても、弟。それは弟でも妹でも同じだよ。俺が女の子だったら、確かに兄貴は嫁さんに迎えてくれたかもれしないけど、それはあくまでも、兄貴が妹を可愛がるのと同じだよ。そんなの、お互いに不幸だ。兄貴、兄貴にはきっと良い奥さんが見つかるよ。まだ、神仏がその人にめぐ逢うには早いから、もう少し待てって言ってるのさ。アチラの気があるとかどうとか言いたい奴には言わせておけば良い。本当の兄貴の良さ、懐の深さを理解してくれる女がこの広い世の中のどこかにいるさ」
口では言いたいことを言い合いながらも、その実、互いの良さと本質を誰よりも理解している二人である。
「普段は無信心のお前が神や仏を語るとは、信じられない」
秀龍の呆れ顔に、浄蓮が吹き出す。
「兄貴も俺と良い勝負じゃないか。言いにくいことを、さらっと言ってくれるね」
「似た者同士だろ」
この世の何よりも固い絆で結ばれた義兄弟は顔を見合わせて笑った。
「だが、これだけは、けして忘れないでくれ。私はお前が不幸になるのだけは見たくない。どんなことがあっても、自分を大切にすると約束してくれないか、―英真」
義兄がこの名を呼ぶときは、いつも真摯に伝えたいと思うことがあるときだけだと知っている。
「判ってるさ、兄貴の信頼を裏切るような真似はしないと約束するよ」
「本当だぞ?」
差し出された大きな手に自分の手を重ねる。しっかりと握りしめられ、その力強さと温かさに、不覚にもまた泣きそうになった。
「だがな、私はお前が本当に女だったならと思うことがある。お前が本物の女ならば、私は妓房などには絶対に入るのを許さなかったし、妻に迎えるという形でお前を一生涯、守ってやれた」
「何を惚(ほう)けたことを言ってるのさ、兄貴。仮に俺が女だったとしても、兄貴は俺を〝女〟としては見ないさ。俺はあくまでも申明賢の弟、つまり、兄貴にとっても、弟。それは弟でも妹でも同じだよ。俺が女の子だったら、確かに兄貴は嫁さんに迎えてくれたかもれしないけど、それはあくまでも、兄貴が妹を可愛がるのと同じだよ。そんなの、お互いに不幸だ。兄貴、兄貴にはきっと良い奥さんが見つかるよ。まだ、神仏がその人にめぐ逢うには早いから、もう少し待てって言ってるのさ。アチラの気があるとかどうとか言いたい奴には言わせておけば良い。本当の兄貴の良さ、懐の深さを理解してくれる女がこの広い世の中のどこかにいるさ」
口では言いたいことを言い合いながらも、その実、互いの良さと本質を誰よりも理解している二人である。
「普段は無信心のお前が神や仏を語るとは、信じられない」
秀龍の呆れ顔に、浄蓮が吹き出す。
「兄貴も俺と良い勝負じゃないか。言いにくいことを、さらっと言ってくれるね」
「似た者同士だろ」
この世の何よりも固い絆で結ばれた義兄弟は顔を見合わせて笑った。
「だが、これだけは、けして忘れないでくれ。私はお前が不幸になるのだけは見たくない。どんなことがあっても、自分を大切にすると約束してくれないか、―英真」
義兄がこの名を呼ぶときは、いつも真摯に伝えたいと思うことがあるときだけだと知っている。
「判ってるさ、兄貴の信頼を裏切るような真似はしないと約束するよ」
「本当だぞ?」
差し出された大きな手に自分の手を重ねる。しっかりと握りしめられ、その力強さと温かさに、不覚にもまた泣きそうになった。