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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

 変わらず窓から差し込む六月の光が眩しい。準基はかすかに眼を細めた。
「理想の世の中とは何なのでしょう?」
「理想の世? 何だか、いきなり話が飛んでしまったな」
 兄が優しい微笑を準基に向ける。
「兄上は常日頃から、民のための世こそが真の理想の世だと仰せです。また、今の国王(サンガン)さま(マーマ)も民草の暮らしやすい世の中を作ることを国作りの第一の目標に掲げておられる。さりながら、現実はどうでしょう? 民の暮らしは困窮し、私たち両班は特権階級であることを笠に着て、民たちから搾取することしか考えていません。罪もない娘が身を売らねば生きてゆけぬ世など、意味がないのではありませんか?。皆が暮らしやすい世を作ると国王さまは仰せですが、私には今の世の中が本当に民にとって暮らしやいとは、到底思えません」
 兄のいつになく厳しい声が飛んだ。
「準基、声が高い! 国王殿下をそのようにあからさまに批判する物言いは止しなさい」
「申し訳ありません」
 準基はうなだれた。
 兄の笑みが更に深くなる。
「さては、準基、恋煩いか?」
 えっと、準基は自分でもいささか恥ずかしいほどの悲鳴を上げた。
「何故、お判りになったのですか?」
 これでは、自ら認めたようなものだ。
 兄はクスクスと笑いながら、準基を見ている。
「そなたの恋した娘は、妓生なのか?」
 当たらずとも遠からずだ。
 準基は思わず頬が熱くなるのを感じながら、頷いた。
「まだ妓生ではありませんが、いずれは、そうなるでしょう」
「そなたが先刻、罪もない娘が身を売らねば生きてゆけぬ世の中が云々と言った時、ははーんと思ったのだよ」

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