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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

「それはまた、豪快というか威勢が良い娘だね」
 兄は眼を瞑り、呟いた。
「客に選ばれるのではなく、自分が客を選ぶ、か。なるほど、つまり、我が弟の想い人は朝鮮一の妓生になろうと夢見ているわけだ」
「朝鮮一の妓生―」
 準基は兄の言葉をなぞる。
 兄は力強く頷いた。
「誰にでもできることではないし、なろうとしても、なれるわけでもない。だが、浄蓮という娘は少なくともこの国いちばんの妓生を目指している。準基、私はこの娘を心底、羨ましいと思うよ。女ながら、並の男には持てないほどの矜持と心意気ではないか? 私のように男として生まれながら、こうして部屋に閉じこもって何をなすすべもない身からすれば、途方もない野望だ」
 準基は唖然とした。
「私には到底、兄上のように考えられませんでした。初めて浄蓮からその言葉を聞かされた時、たとえ選ぼうが、選ばれようが、身体を切り売りすることに変わりはないと―、彼女を酷く侮辱した考えを抱いてしまったのです」
 いささか恥じるように言うと、兄は笑って首を振る。
「いや、それは、事が惚れた女に拘わるゆえのことだろう。私だとて、自分の妻や恋人が妓生になりたいなどと言えば、まず断固として反対する。私は部外者だから、そのように客観的に割り切れるのだ」
 兄が強い瞳でひたと準基を見据えた。
「準基、彼女を信じてやれ。私には、どうやら、この先もそなたのように生涯の想い人を見つけられそうにはない。折角見つけた恋なのだ、悔いのないように、よくよく考えて行動するんだぞ」
「はい。そのように努力します」
 準基は返事をすると、立ち上がった。

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