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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第3章 孤独な貴公子

 どうやら、兄があまりにも脆弱なことに許嫁の両親が不安を抱いたのが原因のようであった。大きな発作はなかったものの、兄はその頃から、小さな発作を繰り返して、寝込むこともあった。
 当時、父は兄に事実だけを淡々と告げた。
―可愛い娘が嫁してすぐに未亡人になっては不憫だと、あちらの両親がそう申してきた。ミンソン、可哀想だが、今回は縁がなかったと思って、諦めなさい。
 廊下ではらはらしながら見守っていた幼い準基は、思わず部屋に飛び込んだ。
―何だよ、それ。嫁してすぐに未亡人になると、何で、そんなことが判るんだ? 父上、そんなのは、あんまりです。兄上はただほんの少しお身体が弱いだけなのに、まるで今すぐ死にそうな病人のように言うだなんて。
 小さな顔をまっ赤にして怒る弟を、兄の方が宥める始末だった。
―もう良いんだ、準基。もし私が許嫁の父親であったとしても、こんな軟弱な男を娘の良人には望まないだろう。ありがとう、準基、私のために、そこまで言ってくれて。
 準基は兄の胸に飛び込んで、泣きじゃくり、兄もまた弟を抱きしめ、静かに涙を流していた。
 そんな兄弟を父はやるせなさそうな表情で眺めているしかなかった。
 準基は、哀しい想い出を追い払うように、ゆるゆると首を振った。
 陽差しが一段と厳しさを増したように思え、準基は額に滲んだ汗を手で拭った。

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