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麗しの蓮の姫~炎のように愛して~【BL】

第5章 天上の苑(その)

 たった一人の男ではなくても、客の一人、その他大勢であったとしても良い。浄蓮の傍にいて、彼女の微笑みを見て、その白い膚に触れられれば。
 準基は切なく考えた。浄蓮が誰を選ぼうと、彼女が妓生である限り、準基は客として彼女をこの腕に抱くのを許される。
 それは、恋を失おうとしている、或いは失った男として、最低の精一杯の譲歩であった。
 それでも、浄蓮の傍にいっときでもいたい。準基の中で男としての誇りよりも烈しい恋情が勝った瞬間だった。
 ひっそりと泣いていた浄蓮が眼を見開いて準基を見つめている。
 夢にまで見た恋しい面影。
 この女が傍にいてくれるなら、他の何も望まないとさえ思ったほどの恋心。
 気がつけば、彼は袖から手巾を取り出して、浄蓮に差し出していた。
 可哀想に、一体、何がこの少女をここまで追いつめ、哀しませているのだろう。もしや、皇秀龍が他の女に心を移したとか?
 妓生の誰かに辛く当たられたのだろうか?
 自分なら、浄蓮をこんなに泣かせはしない。
この涙がもし秀龍のせいなら、いつか、あの男を殺してやる。
 準基の貌を見た浄蓮は、ますます烈しく泣きじゃくっている。
 準基は焦った。女人の扱いには慣れていないのだ。ましてや相手は、恋い焦がれている娘である。浄蓮の涙を見ただけで、準基はもう、どうして良いか判らないくらいに途方に暮れた。
 やはり、浄蓮にとって、自分は逢いたくない、貌も見たくない相手だったのだろうか?
 だから、こんな風に余計に泣けてくるのか!?
 何か気の利いたことを、優しい科白の一つでもかけてやりたいが、生憎、何も言葉が浮かんでこない。
 

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