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掌の浜辺

第1章 春 - story -

24 .続け-4-

 「化学?かな」
 ようやく呪縛から解き放たれた気分。
 「はい」
 「はい。化学、といえばぁぁ、元素記号」
 「周期表」
 「早いね」
 「ううん、偶然」
 「そか。周期表か-。すいへ-り-べ、ぼくのふね、にしとくわ」
 「覚え方?」
 「うん」 「覚え方なら語呂合わせ」
 「語呂合わせ。歴史年号」
 「時代を感じる」
 「古い感じがする」
 「古い?おんぼろ…いや、古屋で!」
 「古屋。日本家屋っぽい」
 「そしたら、世代」
 「世代?おじいちゃん、おばあちゃん」
 「あ、長生き」
 「高齢者」
 「優先席」
 お。俺の番が来た。
 「電車」
 隣ではナオトが寝ているところだ。後ろを見る。同じ。
 「おう、すまん。ください」
 「お」
 見かけによらず心優しい人棚と個人的に思った。
 「何て言いました?」
 「電車です」
 「ありがとうございます。電車は走る」
 「走るはマラソン」
 「マラソンは…クラウチング、じゃなくて、スタンディングスタ-ト」
 「立つやつ?」
 「うん」
 「立つ…起立!」
 「軍隊かい」
 「あ、ぽいな!新しく発見した」
 「軍隊ね、戦車かな」
 「戦車な大砲あるよね?」
 「あるんじゃない?大砲、丸い」
 「丸い、円」
 「円?輪ゴム」
 「あ、そっち行ったか」
 「お金だと思った?」
 「うん」
 「輪ゴムだよ」
 「わかった。のびる」
 「もち?のびる」
 「膨らむ!」
 「風船」
 「割れる」
 「皿」
 「また割ったんだ?」
 「少しかけちゃっただけだよ」
 「え、それ、余計危ないじゃん。手を切るよ」
 「もう捨てた」
 「あっ、ごめん」

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