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ひと夏のアバンチュール

第1章 帰国

飛行機から降りると

夏の匂いがない

あぁ~
季節が違うんだと淋く思う

ここはもうじき紅葉

愁い感じる季節のはじまり


8時間前までは
夏に向かう地球の真裏にいた


心も寒さで閉じ込められたように

うずくのをやめた


『ありがとう』


貴方を思って泣かない、そう誓った



待ってくれている家族がある

ほら

両手を上げて手を振るのは愛娘

娘を抱きかかえ軽く手を上げた彼

「おかえりなさい」

「ただいま、お留守番ありがとう」

娘を抱きしめた瞬間


貴方に重なる愛らしいお人形さん
貴方もこうして私に抱きついていた


貴方達の顔が浮かんでくる


『もう出てきてはだめよ』


そっと呟いた

こころの中から出てこないように


『さようなら』



私の
夏の幻想郷
今印した



決して開けてはいけない
ひと夏のアバンチュール

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