井上真緒編
第2章 2
それから、相手方が来て、なかを見せてもらった。真緒は、なかも悪いと思った。外装だけでなく、なかもこれだけ魅力がないと、入らないと言うのも分かるような気がした。外装は変えようもないので、しょうがないが、内装を変えれば、確かに何とかなる可能性もあるのかなと思った。ただ、やはり金額がどうなのかというのが、問題になるだろう。相手は、仲介不動産屋の片岡さんという人だった。片岡さんによると、オーナーは、いくつかの会社を経営しているという話だったので、それでここを売ってくると言うことは、不景気で仕事がうまくいっていないのではないかと後で、田中は言った。一応価格を聞いて帰ってきたが、言い値でとても無理そうな額だった。真緒と田中もそれなりには、検討はしていたが、相手の言い値とは、かなりの開きがあった。ただ、これから査定額を出すのだから、交渉はそれからだ。真緒は、途中で車から降ろしてもらい、会社の近くの、現場に行った。ここは、もう結構長くやっているところで、仲間も言ったが、もう販売日が決まっていた。それなので、真緒も毎日ここには来ていた。それに、ここは、真緒が推したデザインの物件でもあったので、できあがりは楽しみでもあった。リフォームのデザインは、会社で決めるものもあったし、デザイナーに任せるものもあった。ほとんど手を加えないようなものもあったし、客のニーズに合わせてやるものもあった。そういうのは、賃貸なのかそうでないのかというのにも左右されたりした。とりあえず、現場を見終わって帰ったが、定時は過ぎていた。小倉とだいぶあってないのが、やはり気になったが、体調が酷くなっていくのが、それを越えていたかもいしれない。なんかあるのだろうかと真緒は思い始めていた。幻聴のようなものや幻覚のようなものまで見てしまっていた。精神的な疲労からそういったことになっているのか、それとも体調が悪いからそういったものを見るのか、どうなのか。これ以上悪くなるようだったら、病院に行くしかないと思った。帰りには、スーパーで買い物をしていった。家につくと、疲労がずっしり体に重くのしかかってくる。カーテンを閉め、明かりをつけると、そこには恐ろしい生き物がいたのだ。