向かいのお兄さん
第9章 祭
「なぁ、さっき言ってた"利益"って何?」
『…』
あたしは直也の方を向いた
直也は花火を見たまま、話し掛けてくれたようだ
『利益ってか…利点』
「一緒じゃん」
花が空を染める度
あたしたちの世界も
花の色に染まった
『何でも…ない』
「…ふーん」
直也はただ
空を見上げていた
あたしはそんな直也を
ずっと見ていた
けれど、そんなあたしに気づいて
直也はあたしの方を向いた
「空見ろよ」
『…何で?』
「もったいないじゃん」
『…』
前を向いて
花火を見た
花は 空に 美しく 咲くんだ
「美咲」
『…』
「美咲」
『わかってるょ…』
誰か教えてほしい
何であたしは
泣いてるのかな…