向かいのお兄さん
第23章 ごめんね
『ごめんね…』
あたしは身なりを整えてから、そう言った
「…何で?」
直也ももうベッドに寝転がって、どこか退屈そうな顔を向けた
『さっきのこと…無かったことにして…』
「…」
『直也だって…会って二日目の女と、なんて…何かと都合悪いんじゃない?』
「…わかった」
不服そうだったけれど、直也は了解してくれた
そして少しこっちへ寄って、あたしの腕を掴んだ
「じゃあもう…来ないの?」
寂しそうな顔に
ついついほほ笑んでしまう
『ううん、お見舞いは…来るよ』
「そっか…ありがと」
直也はそう言って、ゴロンとあたしに背中を向けた
あたしはその大きな背中を
眺めることしか出来なくて…
『…またね』
それだけ言って
病室を出た
帰り道は
泣いたせいで視界が悪く
何度も壁にぶつかった