秘書のお仕事
第4章 秘書のお仕事
―――――――
コンコンコン
「入れ」
『失礼します』
あたしはコーヒーを持って、社長室に入った
こぼさないように、ゆっくりと運ぶ
「長いこと掛かったな、1時間は経ったぞ」
『丹精込めて作りましたから』
カチャ
と社長の机に置き、数歩後ろへ下がった
「…」
社長は眉間にシワを寄せながら、コーヒーを見る
「こんなもの飲めるか」
そう言うと、コーヒーをそのままごみ箱へ流し捨てた
『あああ!!!
何するんですかー!!!』
「二度とこんなものを出すな」
『何でですか!?
一生懸命作ったのに…!!』
社長はため息をつくと、「見てみろ」とごみ箱に視線を送った
『…』
あたしはごみ箱の中を覗いた
コーヒーと紙屑が、無惨にも入り混じっている
「豆がそのまま入っている」
『え?』
言われてみれば、まあ確かに…
底に豆らしき粒々がたくさん落ちている
『豆入ってちゃダメなんですか?』
「当たり前だ」
何それ、それならコーヒーマシーンのそばに説明書のひとつやふたつ、置いとけっての…