向かいのお兄さん
第3章 目の前で
「待って待って、何で閉めんの?」
『入ってくんな!!この鬼畜!!』
「うわー何その言われよう…へこむわー」
『へこめ、へこんで異次元に飛ばされろ』
あたしは必死に扉を閉めようとしたけれど、鬼畜はその隙間に足を突っ込んだ
「今日は届け物しに来たんだって、ほら」
鬼畜はそう言うと、扉の隙間から"餅あられ"と書いてある包みを見せた
「佐藤のおっちゃんが、"京饅頭"のお礼にってさ」
『…』
おっちゃんの遣いか…
それなら仕方ないか
あたしは渋々扉から手を離し、餅あられを受け取った
「よし、おじゃましまーす」
『お前は入ってくんなー!!』
そう叫んだもののもう遅く、鬼畜は家に入ってきてしまった
『うわもう、出てけ、切実に!!』
あたしは鬼畜を押して外へ出そうとしたけれど
鬼畜はあたしに携帯を見せる
「流すよ?」
『…』
屈辱なり
「家族は?」
『今は…あたしひとり…』
すると鬼畜の顔がニコォっと笑った
『いや、嘘、いる、お母さんとお父さんとおじいちゃんとおば…』
「嘘だね、部屋上がるよ」
図々しいにもほどがー…