向かいのお兄さん
第14章 影
都会とは言えないこの街でも
夜は明かりが灯り
あたしの少し前を行く直也の横顔は
よく見えた
ほんの10分ほど
それでも、10分も…
あたしはずっと
直也に手を引かれた
「俺のせいかもしれないけど…」
『…』
「間に合ってよかった」
『…』
あたしは
ほんのちょっぴり
直也の手を
握り返した
――――――
――――――
その後、あの男は自分から佐藤造花店を辞めたそうだ
直也があの男を知らなかった理由ってものがあって
なんでも、いけ好かない奴がいるなぁとは思っていたが、それがあの男だとは知らなかったんだと
直也は、気に入らない奴は、眼中に入れない人間なんだな…