向かいのお兄さん
第22章 入り混じり
「そういえばー…」
直也はまるで、独り言のように呟いた
そのあとすぐにあたしの方を向いたので、
あたしに話し掛けているのだとわかった
「昼間に、和樹って人が来た」
『…そ』
和樹…と言えば…
『ねぇ覚えてる?
直也とあたしと和樹で…』
エッチしたって
「…?」
『…ううん、何でもない』
あたしはゆっくり俯いた
あたしや和樹のことすら覚えてないのに
何したかなんて、覚えてるわけないよね…
『…』
時計を確認すると、8時だった
『…看護師さんは、部屋に回って来たりするの?』
「まぁ、見回りが10時に一回あるよ」
『他は…来ない?』
「うん」
『…尿の…』
「歩けるから、ひとりでトイレくらい行けるって」